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なんで奇策?

ハンマーのような回転機動には、奇策とされるだけの理由があります。槌部分にあたる最右翼あるは最左翼の部隊の消耗が激しいんです。
考えられる理由は二つ。
1、大きな円を描く移動を、短時間で行うので、移動にかかる負担が大きい。
2、回転するような機動をすると、相手に脇腹を見せてしまう事があるので、側面攻撃をうける。

もちろん、それをクリアする方法も三つあります、三つのうちどれかを備えている者は、ハンマー機動を成功させているみたいです。
1、槌部隊の攻撃力・速度を増す・・・消耗しきる前に戦闘を終わらせるのが目的
2、槌部隊の持久力を増す・・・そもそも消耗させない
3、槌部隊が消耗しても、すぐに新手の槌部隊を出す・・・予備隊の有効活用
アレクサンドルは騎兵によって1を満たし、1940年のドイツ軍は戦車によって1と2を満たしました。
3の例もあります、古代ギリシャでは、槌部隊の陣形を縦に長くして、前列がやられてもすぐに新手を出せるようにしたとか。

しかしクリアできない例もあります、シュリーフェンプランです。
ベルギーを道にしてフランスの要塞線を迂回するという壮大な計画は、失敗に終わっています。
なぜ失敗に終わったかと言えば、三つの条件のどれも満たせなかったからです。
1は塹壕の防御力の向上で満たせなくなり、2は移動を歩きで行うので満たせなくなり、3は鉄道が大混雑して補給線に問題を抱えていたので満たせなくなりました。

【蛇足】
シュリーフェンプランは戦略レベルから言って、無理がありますよね。この計画自体がベルギー侵攻という政治的な課題を抱えていますし、そもそもフランスとロシアをまとめて相手にするのはどう考えても死亡フラグです。
ただ、シュリーフェンの言い分としては「政治レベルの問題があるならこの計画を止める判断を政治家がするだろう」という事になるんでしょうかね。まあ当時のドイツの政治家は何もしなかったのですが。

必殺「回転ハンマーッ!!」

・・・アレクサンドロスは3段に並んだ歩兵の横隊のうち、左半分に「重装甲歩兵」を配置し、右半分に「軽装甲歩兵」を配置して攻勢的に運用した。軽装甲歩兵に期待したのは機動性と柔軟性であり攻撃に適すると判断したにほかならない。アレクサンドロスの実際の主攻部分は多くの場合、さらに右翼に配置されたカンパニオン騎兵だった。したがって、軽装甲歩兵は二つの仕事を行った。一つは騎兵と共同して攻撃することであり、もう一つは騎兵と重装甲歩兵をつなぐことだった。たとえて言えば、騎兵がハンマーの槌であり、軽装甲歩兵が柄であり、重装甲歩兵がハンマーの手元の役割だった。

「戦術と指揮」より、アレクサンドロス大王の戦術について

【蛇足】
面白い話ですよね。少なくとも俺はそう思います。
でも、回転するような機動ってどちらかと言えば奇策ですよね。アレクサンドロス以外でこれにこだわる人はいないのでしょうか。
ああ、でもドイツがいました。1914年と1940年にドイツ軍がやったことは、まさに回転機動での殲滅戦ですね。
思えば彼らは「フランス瞬殺コンボ」を百年以上研究してきたわけですか。
グナイゼウ、モルトケ、シュリーフェン、マンシュタイン、ともはや世代を超えていますね。

MDはいたちごっこ化するか?

MDで守る側がいれば、当然MDを突破する側もいます。そして突破する側は簡単には迎撃させてくれないでしょう。日本もMDを持てばこれを考えざるをえなくなります。

さて、攻撃側がMDを突破するにはどういう選択肢があるんでしょうか?
考えられるのは三つです
1、探知されない核攻撃手段を使う。(「探知されると迎撃されるなら、探知されなければ良いじゃないか」作戦)
2、核弾頭と囮の通常弾頭をまぜて発射して、飽和攻撃する。
3、国際的な取り決めでMDを禁止してしまう。

この三つ中で最もありえそうなものを選んでみましょう。
まず1、今のところ米軍しかステルス爆撃機を保有していないので、日本が「探知されない核攻撃手段」にさらされる可能性は低いです。
次に2、これは一番ありえそうです。例えば某仮想敵国は核弾頭だけじゃなく、通常弾頭を装備した短距離ミサイルを持っています。
そして3、これの可能性は低くなって来ているようです。MDに反対する国が、MDを装備しようとしているような事になっていますから。

やはり2が一番あり得そうですね。これを迎撃する側にとって、重要なのは数です。
迎撃できる回数には限りがあります。こちらが迎撃するミサイルの数を、迎撃できる限界を超えないようにしなければなりません。
これを解決するための方法は二種類あります、一つは迎撃できる数を増やす方法A、もう一つは迎撃しなければならないターゲットを減らす方法B。
攻撃側が飽和攻撃してきたとき、迎撃側がとれる選択肢はなんでしょう。三つ考えられます。
1、囮も核弾頭もを全て迎撃できるだけの、ミサイルを用意する(方法A)
2、囮と核弾頭を見極める(方法B)
3、政治レベルの取引で、囮の使用を禁止してしまう(方法B)

このなかで使えそうな選択肢を選んでみましょう。
まず1、これが一番確実です。しかしコストがかかります。
次に2、これは難しそうです。普通に考えて、囮と核弾頭のミサイルの型式は同じにしないと囮になりませんから、攻撃側は囮と核弾頭は大きさや形が同じものを使うに決まっているでしょう。
最後に3、これも難しいです。核戦力に固執するような国が、自国の核戦力が制限されるとわかってそんな条約を結ぶわけがないからです。
上の三つを考えた結論は、1しか無いという事になりますね。

ミサイルというのは当たりやすいもの

前回はやたらミサイルの命中率が高いことをやたら強調しましたが、考えてみればそれは当たり前の事なんですよね。
例えば
1:射程が長い。比較的簡単に簡単に当てられる距離へ接近できます。
2:命中率が高い、というか勝手に狙ってくれる。機銃ほどしっかり狙う必要がありませんから、ターゲットを撃てる位置についたらすぐに撃てます。
3:機動性が高い。機銃は「ターゲットに撃って当たる位置」が限られていました、正面か後ろです。しかしミサイルは相手がこちらから見て横に動いていても、十分に当てる事が可能です。
ミサイルが他の手段より当てやすい理由はこの三つですね。多いのか少ないのか。

ミサイルの命中率がすごくなるから

いわゆる「近代航空戦の特徴ってなんでしょうね?」聞かれたら、俺はあえてミサイル兵器の命中率の向上と答えます。例えばAMRAMMです、撃てば撃墜と言っていいくらい命中率が高いです。
空対空戦闘に限らず、MDでもそれは現れています、2005年以後の実験でTHAADは30発中29命中という成果を上げています。
さらに「ミサイルの命中率の向上するとどうなるか?」「何がすごいのか」と聞かれたら、「ターゲットを撃墜するための条件を満たすのがかなり簡単になるから」と答えます。
それはすごい事です。過去の空戦では敵機を発見してから撃墜するまで手間がかかるものでした。手順は以下の通り(とされているらしいです)。
1、ターゲットを発見する
2、機首をターゲットに向ける
3、ターゲットに射撃できる位置を占める
4、機銃が当たる距離まで近づく
5、ねらいをつける
6、引き金を引く
WW1とWW2の空戦がこんな感じでした。
(WW2といえば、その時代の航空機を扱ったIL-2というフライトシムがあるのですが、そのゲームにはとにかく難しいという特徴があるんですよね。機体はジャイロ効果を受けてまっすぐ飛ばない、機銃の弾はGの影響を受けてまっすぐ飛ばない、ターゲットは常に動いている、自分がターゲット狙っているときに別の敵機に背後から奇襲を受ける、などなど。まあ難しいのは俺が下手なだけか知れませんが)

そして今はどうなっているかと言うと
1、ターゲットを発見する
2、機首をターゲットに向ける
3、ロックオンする
4、ターゲットに射撃できる位置を占める
5、ミサイルが当たる距離まで近づく
6、引き金を引く
これだけ見るとあまり昔と変わらないように見えますが、「ミサイルを使い、さらにそのミサイルの命中率が高い」から事が変わるんですよね。
近代航空戦ではレーダーの性能とミサイルの命中率が高いせいで「発見=ロックオン」になっているので撃墜に必要な条件を比較的簡単に満たせちゃうんです。
理論上は「相手が自分を見つけるより先に自分が相手を見つける」と「ミサイルが当たる距離まで近づく」という条件さえ満たせれば撃墜できるわけです。(まあ現実には他にも色々な要素があるとも思います、あくまでも理論上の話です)
WW2では「撃墜に必要な条件」を満たすのが極めて難しかったんですが。

しかし現代になってただ単に昔より簡単になったワケではありません。
「発見される=ロックオンされる」ならそもそも見つからなければ良いわけですから、当然世界のあらゆる空軍は相手より先に自機が見つからない為の方法を探していることでしょう。電子戦やステルスもそのためです。

【蛇足】
あるいは「発見される=ロックオンされるならそもそも見つからなければ良い」という理屈が対空戦闘だけじゃなくてMDにも使われるかも知れませんね。MDの命中率が上がったら、「迎撃されるならそもそも見つからなければ良いじゃないか」というアイデアが出てくるのは時間の問題でしょうからね。
というわけで「ステルス核攻撃」や「ミサイルを探知する衛星への攻撃」が主要な手段の一つになるかも知れない、とトンデモ予想しておきます。(少なくとも「2009年中にアメリカで内戦が起きる」とかいう予想よりは荒唐無稽ではないでしょう)
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